#05 パワーがデカけりゃそりゃ偉い(前編)
「入れる・・・・入れない・・・」「無理・・・・あー入れたい・・・」
・・・・・・。
「ダメ・・・これ以上入んない・・・」
「・・・これだけデカけりゃ戦えr
大丈夫か、少年よ。
デッキの調整をする少年の独り言に若干の不安を覚える。
しかし今、彼の「赤単ファッティで殴る」デッキは、自然文明のマナ加速を加え「赤緑ファッティで殴る」デッキへと変貌を遂げようとしている。
・・・・・・・
・・・え?それ入れるの?
・・・・・おいおい、なんでそれ外しちゃうかな
・・・いやいやそれは4枚入れないと意味ないでしょ
・・・・・
と私に心の中でツッこまれながらも少年の新デッキは完成したようで一人模擬戦を行いデッキの具合を見ている。
毎回思う。
少年、デッキチェックでもちゃんとシャッフルしなさいよ!
同じカードが(しかもマナブースト)が4枚並んで手札にくるとかおかしいから!
しかもそれを見て「このデッキは速い!」じゃないよ!
早いのはその判断だよ!疑おうよ、その配牌を!
0.01%ほどの確率の初期手札で偽りの感触を得た模擬戦から自信満々の少年。早速対戦の申し出。
「おねがいしまーす」
「あれぇ!?」
「どうした?カード入れ間違えたか?手札悪いならデュエマリガンしろよ。キープ」
「うん・・・全マリする・・・」
何という事でしょう!
私に完膚なきまでにシャッフルされた山札から出てきた手札は先ほどの模擬戦の時と全く異なる様を示しているようです!
「・・・キープ」
対戦前とうって変わって完全に意気消沈している少年。
どうやらデュエマリガンを行っても0.01%の手札にならなかった様子です。(当たり前)
「じゃんけんぽい・・・あー・・・」
おまけにじゃんけんにも負ける少年。
せめて先攻を渡そうといつもだいたい出すグーに対してこちらはチョキを出したにもかかわらず「へなへなパー」で敢え無く後攻と相成りました。
もう(自分で自分を)踏んだり蹴ったりです。
少年1ターン目のドロー&マナチャージも力なく、私2ターン目に早くも2ブレイクのピンチ。
しかしここで少年に光明。
ブレイクした2枚ともがS・トリガー付きのマナ加速呪文。
いっきに1→3とマナを伸ばした少年、次の自ターン(少年3ターン目)にも運の女神がほほ笑む。
マナチャージで3→4とした少年の一手は博打マナブースト!
山札の上から2枚を公開しそれがドラゴンであればマナゾーンに置くことが出来るという優れもので、これが2コストで唱えられるというから驚きだ。
しかしここで疑問。
「(少年そんなにドラゴン入れてたっけ・・・・?)」
私の心中もどこ吹く風、少年は指先に全神経を集中し山札の上へと挑む。
「ぎゃくふうもーかぜのうちいいいいいいーーーこいっ!!」
ーー1枚目・・・ヒット!-ー
ーー2枚目・・・続けてヒット!ーー
「おおお!!」
「シャッ!!!シャッ!!!あづwdjwだk!(解読不能)」
少年マナ4→6
中々の引きである。
ここで先ほどの疑問をぶつけてみる。
「ほほん、やるじゃない、ところでそのデッキにドラゴンどれくらい入ってるの?」
「いっぱいあるよ、・・・多分10枚くらい」
ほほん、10枚ね。10枚。
・・・・・・。
よく出たな!たった10枚で!
っていうかその呪文はそんなドラゴンの枚数のデッキに入れるもんじゃねぇええ!!!
少年、余ったマナは2。
ここで驚愕、またしても同じ呪文!!
「ぎゃくふうもーかぜのうちいいいいいいーーーじゃあああーーー!!」
じゃああ??
ま、なんにせよ無駄うちn
ーー2枚ともヒット!ーー
どうなってんだこの野郎。
少年、2枚目のカードをドラゴンじゃないと思い墓地に置こうとしたがそれはまさしくドラゴン。紛れもなくドラゴンとして扱われるドラゴンギルド。
私が誤りを指摘すると「ビミョー」な顔をしていたのが瞬時に綻ぶ。
(あのねその呪文ね、デッキに30枚ドラゴン積んで毎回外す人もいるんだからね?私だけどね?)
これで少年はこのターン一気にマナを伸ばし、少年マナ4→8と大躍進を遂げた。
「速い!このデッキ速い!最強!」
・・・あー、こうやって勘違いとか思い込みって生まれていくんですねー・・・
誰に向かってなのかわからないセリフを心の中で呟く。
やけに高いテンションを横目に粛々と私3ターン目をすすめるが、特に何も新たなクリーチャーが出せず既存分でシングル・ブレイク×2。しかし激痛(?)。
少年の残シールドこそ1枚にまで減らせたが、そのブレイクがいずれもS・トリガーで2体ともマナゾーンに飛ばされてしまう。少年の顔が得意げである。
少年3ターン目もマナチャージだけでターンを終える。少年マナ8→9。
さて私4ターン目、コスト軽減クリーチャーを配備しドロー呪文を連打。迎撃態勢を整える。
そして少年の待ちに待った4ターン目、マナチャージでようやく10枚に到達したマナは少年には輝いて見えているのでしょう。
そしてそれらを搔き集め一気にタップして繰り出してきたのは・・・・・・
《偽りの名 13》!!
ファッティ中のファッティ!
コスト10!
パワー24000!
そしてワールド・ブレイカーを所持!!
その他能力は・・・なし!何にもなし!!潔い!!
パワーがデカけりゃそりゃ偉い。
100%ドヤ顔の少年、もう勝った気でいるのだろう。
余裕しゃくしゃくで高らかにターンエンド宣言。
少年、ワールドブレイクしたくてうずうずしている。落ち着け。
彼はほとんど火文明ばっかり使っていたおかげで、もしかした知らないのかもしれません。
問)確定除去って知ってますか?
知ってる
>ワールドブレイクしたい
そんな残念な回答が返ってくるような少年の目を覚ますために、心を鬼にして改定除去「山札送り」を放ちます。
「ふぁっ!?」
ご自慢の24000様が山札に送致されて愕然とする・・・と思いきや案外そうでもなく、「あー、やっぱりねー、そうくるよねー」と余裕を見せる。
24K砲が飛ばされた次の少年5ターン目、マナチャージもせずに意気揚々と繰り出したのは・・・
またお前か。
チラと少年を見やると何事か、合掌して祈っている。
・・・あぁ、これが最後の《偽りの名 13》なんだな・・・
ターンエンドを告げる声に祈りを込め、私6ターン目が始まる。
マナをタップ・・・1・・2・・3・・4・・5。
「5ッ!?」
少年が突然に裏返った声を上げる。
恐らくは彼は5マナのクリーチャー《ハクション・マスク》を想像したのだろう。
とても優秀な《ハクション・マスク》
これはバトルゾーンに出た時に相手の一番小さいパワーを持つクリーチャーの中からを相手に選ばせて1体破壊するCIPを持つのだが、如何せん少年は《偽りの名 13》しかバトルゾーンに出しておらず、最も小さいパワーとなれば自動的にパワー24000の御大を破壊することになる。
そうして手札から繰り出されたものは・・・・
後編へつづく
≪#04 速さのその先へ(後編)
この物語は実話をもとに構成されているフィクションです
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